教員からコンサルタントへ。人材育成を軸に、提供価値を広げていく

教員からコンサルタントへ。人材育成を軸に、提供価値を広げていく

グロービスの法人部門の1つ、グロービス・エグゼクティブ・ディベロップメント(GED)でシニアアソシエイトを担う河野さん。元小学校教師という異色の経歴を持つ河野さんの胸には「人材育成」という軸がありました。異業種からの転職を経て、どのような成長を歩んできたのか。これまでのプロセスとともに想いを紐解きます。

小学校教師から民間企業へ。広い視点で教育に携わりたい

大学を卒業後、沖縄で小学校教師として勤務していた河野さん。ルーツを辿ると、学生時代より教育や人材育成への関心を強く持っていました。

河野 大学は教育学部で地域おこしや島おこしを専門に研究していました。教育という観点から地域を変えたいと考え、卒業後は希望して過疎化の波を受ける地域に赴任。しかし実際に働く中で、過疎地域の活性化のためにはまずは産業やビジネスの発展が欠かせないと感じ、民間の会社へと転職を決意しました。

大手ITベンチャーへと転職をした河野さんは、未経験から営業をスタート。大企業向けのシステム導入プロジェクトに携わる中でビジネススキルを磨いていきます。

河野 教師は良くも悪くも固定観念に捉われることも多い世界だったので、民間の企業に転職したことで視野は大きく広がりましたね。

そして3年半が経つころ、もう一度幅広い意味で「教育業界」に関わりたいという想いで、新たなキャリアに踏み出します。

河野 もともと前職の企業が創業期にグロービスのベンチャーキャピタルから支援を受けていた経緯があり前職内でグロービスは有名でした。また、グロービスが主催するG1 サミットの評判なども聞いていました。転職を検討した際、教育に携わりつつも新しいことに挑戦するのであれば、グロービスが行っているようにビジネス創出/変革の側面から社会人の教育や人材育成に関わりたいと思ったのです。
当時、法人部門のプロジェクトの中には地方創生に携わる市役所職員の育成などをしているプロジェクトもあり、いつか自分もそんな仕事に携わりたいと感じ、選考を受けました。

グロービスで法人向けに教育・人材育成を行う組織は二部門。河野さんは面接を受ける中で意向を固めていきました。

河野 テーラーメイド型の研修を行うGCS(グロービス・コーポレート・ソリューション)と、体系化したサービスを提供するGED(グロービス・エグゼクティブ・ディベロップメント)。どちらの部門の方ともお話をさせていただき、どちらも魅力的に感じましたが、最終的にはGED配属を希望しました。
特定の企業に深く入り込むよりも、多くの企業に広く携わる部門の方が、前職のスキルも活かすことができ、私の性格に合っていると感じたんです。

実体験が気づきに変わる。大学院での学びを業務に反映

こうして2018年にグロービスGED部門に入社をした河野さん。異業種からの転職だったからこそ、当初は苦労があったと振り返ります。

河野 人材育成はとても定性的で、具体的なイメージを想像しづらい商材だと思います。受講した社員の方にどのような行動変容の期待が持てるのか、受講後の姿をイメージできるよう意識してお伝えする必要があるのです。その勘所をつかむのに、1年はかかりました。入社後、先輩から『時間がかかるものなので、焦らずね』とアドバイスをもらっていたものの、大きな壁を感じましたね。
研修を受けるお客様は、具体的な実務上の課題がある上で、一度抽象的な学びに入ります。そして研修を受けた後、実務の課題に戻って効果を発揮するという『具体→抽象→具体』の接続が重要です。その接続を各受講生の立場になりきって、自分の言葉でいかに伝えられるかが大事だと、仕事を通して学んでいきました。

人材育成の重要性、そこに携わるグロービスならではの育成のこだわり──それを顧客へと提案できるようになるために、段階を踏んで成長を重ねていきました。

河野 最初のステップはeラーニング系のコンテンツ『GLOBIS 学び放題』の導入説明など、オペレーショナルな仕事から学んでいきました。続いてセカンドステップとしてスクール型研修を担当。お客様の課題感をお伺いしながらオペレーションの説明と提携のサービス内容を紹介し、符合させていく業務です。そして入社後1年経過した段階で、リーダー候補者向けの研修を担当しはじめました。

提案における勘所をつかめるようになった大きな理由のひとつが、自分自身もグロービス経営大学院で実際のプログラムを受講したことでした。

河野 サービス内容を自分が体感し、自分自身はもちろんのこと、ほかのクラスメイトにも目を配りました。自分の中で大きな気づきがあったり、クラスメイトが頭に残っている内容が自分と違うことを察知したり、あらゆる『気づき』を蓄積し、感覚を養っていきました。

グロービスはほかと違う──自分の言葉で、伝えられた喜び

一歩一歩階段を登り、成長し続けた河野さん。顧客から認められたときに、自分自身もその成長を実感できたと話します。

河野 これまで成長を感じた印象的な案件として、大手通信会社の次世代リーダー育成プロジェクトの案件に携わる機会がありました。未来に向けて期待をされるメンバーが、さらに視点を上げて、次のステップに成長していくためには、どのような力を伸ばしていけば良いのか、人事担当者の方から相談を受けたのです。
全くの白紙段階から顧客とやりとりを重ねその企業における次世代リーダーの定義を模索。その案が先方内の経営会議で採用され、結果として当社の育成プログラムに派遣されることにもなりました。自分でゼロから作った提案内容が先方から認められ、かつ感謝された経験は、自身の成長を感じました。

グロービスのリーダーシップ研修の魅力を顧客に実感してもらえた出来事も、河野さんの心に強く残っています。

河野 またもう1つ成長を実感した案件として金融系ITサービス企業の営業本部の案件で、チームリーダー層向けのリーダーシップ研修を担当する機会がありました。リーダーシップ研修はグロービス以外の企業でも選択肢が多く、お客様からは『グロービスならではの価値』の説明を求められました。
グロービスの特徴は、リーダーシップ研修に限らずですが『講師から教わるのではなく、受講者が自ら気づく(そのため深い学びとなる)体験を提供できる』こと。上司の力も借りながら、弊社の提供価値が今回のリーダーシップ研修においてどのように価値になるのか、具体化して提案しました。
その結果、『グロービスの研修は、確かにほかと全然違うね』と、納得感のある言葉をお客様からいただくことができました。何気ない瞬間でしたが、非常に定性的な人財育成の価値を自分の言葉で語れるようになったことに気づきました。

多種多様な企業と関わるGED。その企業の未来を担う人の育成をサポートすることにやりがいを感じています。

河野 人材育成は企業にとって重要なファクターです。とくに優秀な人を集める選抜人材育成では、次世代経営層となる上層部の人と関わることもあり、世の中の役に立っていることを実感できます。
また、社内に目を向けたときに、既存のサービスを提供するだけでなく、日々改善を重ねていく社風にも、充実感があります。GEDはビジネスにおける原理原則となる学びを研修プログラム化し、常に高品質なパッケージプログラムとして提供できるよう磨き続けることを強みとしています。
そのため、日頃からメンバーもリーダーも、そのサービスの追加や品質の改善、また仕組みを改良する意識を強く持っています。サービスをより良くするために所属部署だけでなく縦横のつながりを活かし、さまざまなプロジェクトが発足されています。経営企画的な視線で考えることが求められ、プロジェクトチームを持てたり、常に複数のプロジェクトチームに参加できたりすることにもおもしろみを感じますね。

体系化したビジネスモデルならではのこだわり。チーム一丸となって顧客に向き合う

GEDで働く上で河野さんが大切にしているのは「顧客のため」「社内のみんなのため」を考えて仕事するということ。

河野 GEDはビジネスモデル上の思想としてさまざまな顧客ニーズに対して体系化して対応することを大事にしています。ただときには、お客様より『少しカスタマイズできませんか?』とご要望をいただくこともあります。
この場合の『カスタマイズ』は、『自社の内容に寄せられませんか?』ということを意味します。確かにカスタマイズすることで受講者が研修に没入しやすくなる効果は見込めるのですが、実業務に近い内容を扱うことで、学びの幅や奥行きが狭くなり、今の業務にしか活きない非常に短期的な学びになってしまうという懸念も同時に生まれます。
本質的な育成課題がどこにあるかを議論すると、打ち手としてカスタマイズをすることが必ずしも最適解とは限らない場合も多くあります。簡単にカスタマイズに応じないということは言葉で表す以上に実現することはきわめて難しいことですが、これまで弊社が30年間積み重ねてきた学びの集大成となるプログラムなので品質には自信を持って、本質的にどこにお客様の課題があるのか議論し、お客様にとって最善となる提案を見つけていくことを心がけています。
また、カスタマイズを受け入れるときは、その後の影響も考えることが重要です。全体的なカスタマイズとなればGCS部門に引き継ぐ形となりますが、一部分のカスタマイズであればGED部門で請け負う形となります。カスタマイズを行うということは、それだけ社内のさまざまな関係者に負荷をかけてしまうことになるので、当社視点で見ると、その分利益率を悪化させてしまうことにもつながりますし、何より共に働いている仲間に迷惑をかけることにもつながるのです。
もしどうしても微小なカスタマイズを受けざるを得ない場合は、その後のフローでどのような調整が発生するか、そこに関わる他のメンバーのことも考えて仕事を組み立てるよう心がけています。GEDはビジネスモデル上、後工程のことも考え組織全体のことを考えて仕事ができるかという点も大切なポイントですね。

グロービスに入社後、約4年間で自己成長を加速させている河野さん。グロービスで経験を積みながら、これまでの知見も活かしたライフキャリアプランを描いていきたいと話します。

河野 GEDでは、より多くのさまざまな価値提供のパッケージを作れる余地があると考えています。役員層向けのスクール型研修など、改善しながら新しいパッケージを提供できたら楽しいと思うのです。
また、社内で希望異動できる仕組みがあり、まったく別の事業に挑戦することも、ひとつの選択肢として提供されています。音楽と食とアートの祭典『Lucky Fes』、B1リーグに昇格したプロバスケットボールチーム『茨城ロボッツ』、LuckyFM 茨城放送と、グロービス全体としてはますます事業の幅を広げているので、新事業で新しいものを作ることにも興味を持っています。
また、個人的な思いとして、将来的には島嶼・過疎地域におけるビジネスと教育を通した地域活性化の仕組みを作っていきたいなと思っています。大学時代からずっと関心があることでもあり、当初離島の教員を辞めて現在までのキャリアを選んだ背景としてもビジネスを創出するという形で島おこし・地域おこしを実現したいという想いが強くありました。
日本の田舎には、現在うまく使われていない資本が数多く放置されています。大学院で学んだMBAの知識も活用しながら、島嶼・過疎地域ならではのビジネスを興し、またそういった仕組みを学校教育にも取り入れ、持続可能な地域づくりの仕組みを作りたいと思っています。

異業種から挑戦を経て、新たな未来を想い描く河野さん。今後も人材育成という領域を軸にその歩みを続けていくことでしょう。